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県北の伝統と新ジャンルが融合。魅力発掘プレゼンテーション(後編)

2020年1月16日。茨城県北ガストロノミーコンペティション。前半4事業者のプレゼンテーションを終え、休憩を挟んで、後半の4事業者のプレゼンが始まりました。

cucina NORD IBARAKI


後半、最初のプレゼンテーションは、日立市の『cucina NORD IBARAKI(クチーナノルドいばらき)』のシェフマネージャー、佐藤 協壱(さとう きょういち)さんです。

糊がパリッと利いた純白のコック服、胸元にはクチーナのエンブレムが光っています。いわば正装でのプレゼンテーション。熱い気持ちが伝わってきます。2017年のオープン時から「メイドインいばらき」をコンセプトに掲げているガストロノミーの実践店でもあります。

春菊のジェノベーゼパスタ

常陸秋そばの実のスープ仕立て

プレゼンでは、ワーキンググループに参加して、食材についてもっと考察の深掘りが必要なこと、そして、どうしたら美味しくなるのかを熟考することを再確認し、更なる地域の生産者さんとのより深い連携と、この地ならではの資産を見つけ出すことの大切さを語りました。

具体的な実践においても、2019年12月からグランドメニューの全面的な見直しを行ったこと、そして、新たに地元の味噌蔵の“もろみ”を調味料として導入し、常陸秋そばをノルド流ガストロノミーとして仕立てたスープメニューなど、積極的に県北ガストロノミーを実践していることがひしひしと伝わってくるプレゼンテーションでした。

 

あんこうの宿 まるみつ旅館

次に、北茨城市の『あんこうの宿 まるみつ旅館』の代表、武士 能久(たけし よしひさ)さん。

今年度の実践的な学びの中から茨城県北の食材を改めて考察する中、武士さんは「自然薯」に着目。知る人ぞ知る「北茨城方式」といわれる自然薯の栽培方法によって自然薯がより身近になったことにも触れられました。

提案メニューは、北茨城の自然薯と地域の食材をふんだんに使った「北茨城高級自然薯丼」です。ごはんや卵、そして、平潟漁港で水揚げされたあんこうの肝、まるみつ旅館の温泉で養殖したトラフグの骨でつくる割り出汁…など。地元の食材へのこだわりが詰まっています。

北茨城高級自然薯丼

また、新しい取り組みとして自然薯の漬物の商品化も目指しています。自然薯の浅漬け、塩麹漬け、キムチ漬けなど、何種類も試作を手掛けていますが、大葉の浅漬けが風味も爽やかで自信作とのこと。こちらも気になる存在です。改めて地元の食材を考察し、まるみつ旅館として実現できる、地に足のついたプレゼンテーションでした。

 

横川温泉 元湯 山田屋旅館

続いては、常陸太田市の『横川温泉 元湯 山田屋旅館』の館主、小林 康昭(こばやし やすあき)さん。

今回、小林さんが常陸太田市の特産品や郷土食などの中からテーマに選んだのは「つけけんちんそば」でした。コンセプトは、「つけけんちんそばの再構築×茨城県北の未来~新しいカタチ~」。地元名産の常陸秋そばの畑や野菜畑が広がる常陸太田市の風景をひとつの皿(額)の上に表現するという斬新なもの。

その名も「つけけんちんそば~Art Style~2020」。そば粉のガレットに地元の野菜を乗せて、そして、なんとそばつゆをジュレにして一緒に巻いて食べるというもの。これには審査員の方々もびっくり。

つけけんちんそば~Art Style~2020

もうひとつは、空から見た常陸太田市里美地区の田畑の美しいコンポジションを表現する一皿。こちらは「つけけんちんそば~田園style~2020」。美しく長方形に揃えた色とりどりの食材に常陸秋そばの粉を加えた出汁のソースをかけて食べるというもの。これも凄いです。ビジュアルも美しい。

つけけんちんそば~田園style~2020

そして、最後の3つ目のメニュー提案は、郷土料理の「いも串」を斬新にアレンジした「つけけんちんmodernいも串」。こちらは、そば粉を溶いて地元の食材をフォンデュにして食べる料理で「食べてみたい!」という食欲にかられます。

つけけんちんmodernいも串

郷土愛が満ち溢れる小林さん。まさに、常陸太田市里美地区の美しい原風景を一皿に表現する素晴らしい料理の提案でした。小林さんご自身の“次世代のスタンダードを目指す”という、未来を見据えた思いが感じ取れるプレゼンテーションでした。

 

食彩 太信

そして、いよいよ最後のプレゼンテーションです。とりを飾るのは、北茨城市の和食店『食彩 太信』の店長、前田 賢一(まえだ けんいち)さんのプレゼンテーションです。

前田さんは毎日のように鮮魚の仕入れを自ら行っています。地元の大津港に出向き、自らの目で鮮魚の目利きをしています。そんな日々の仕事の中で地元の漁師さんから聞いた幻の郷土料理「にえー」に着目。レシピは存在せず口伝による作り方から紐解き、試行錯誤しながらやっと自分でも納得のできるものになった、とのこと。

「にえー」をご飯にのせて

「にえー」の調理の様子

「にえー」は、あんこうの肝をほぐして炒め調味した甘じょっぱい料理。ごはんにかけて食べたり、お酒のおつまみにも合うそうです。実際にお店のコースメニューにも導入しており、今年の夏には、いよいよ瓶詰めにして販売を予定しているとのこと。一度は途切れた、幻の郷土料理の「にえー」の復活も間近。茨城県北ガストロノミーにおける加工品の可能性を感じさせられました。

合計8組のプレゼンテーションが終了しましたが、みなさん、しっかりと事前にリハーサルをしてきたようで時間切れになる人もいませんでした。どのプレゼンも、それぞれの事業者の個性が出ており、内容の濃い有意義な発表でした。果たして、審査員の採点やいかに…

表彰式編に続く…

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